top of page

ついにカートゥーンがカラーになる

At Last〜 Movie Cartoons in Color
著/ジェームス・ボーエル
 
<P28-29 見開き>
左ページ右上の導入文:
 モノクロ映画は成功を収め、順調にキャリアを積
重ねてきた。そして遂にアニメはこの記事で紹介す
る1つの手順を経て、魅力的な色を得ることになる
 
左ページ左下の解説
 カラーアニメの制作手順は上から下に、
以下のとおり。キャラクターがセルロイドに
インクで描かれる。そのセルロイドの反対側
から色がちゃんと入っているか確認。セル
ロイドに描かれた背景。その上にアニメー
ションキャラクターを置く。次ページにあ
る挿絵は、色の染料がどのようにフィルム
エマルジョンに適用されているかを説明
している
 
右ページ下の解説文:
 右上の図は、トレイに染めさせた際にマルチカラー効果を
作る赤と青に敏感な乳状液がシングルフィルムにどのように使用されているかを
表している。赤と青に染められたフィルムがあわせられ、スクリーン上に多彩な色を再現する。
カラーかそうでないかに関わらず、アニメ映画でもこれは同じプロセスだ。絵の描かれたセルロイドシートもフィルム毎に1フレームずつ、オペレーターが新しい”セル”を置き、撮影されている。
 
本文:
 たった今、ハリウッドで最初のカラーカートゥーン映画の13個のうち1個目のリールが完成した。人気エンターテインメント形態における新たな時代の始まりを象徴し、ミッキーマウスとその仲間たちを映画業界内でもっとも稼ぐ俳優に仕上げた。とはいえ、彼らは給料をもらっていないのだが。ボストン在住のアーティスト、テッドエシュバウ、彼がついにカラーアニメーションを作り出すことに成功した男だ。
 カラーコミックを作るにはモノクロと同じ物を複製することになり2倍の制作数になる。その複製した物を複雑に色塗りする作業があり、色付けしたものを撮影カメラのフレームを通して元のモノクロのフィルムにダブルネガティブ(焼き付ける)しなければならない。
 1つのフィルムのために15,000枚の異なる図面をアーティストスタッフがセルロイドに描き、それが16,000のフレームに構成される。セルロイドに描かれている1枚の絵には6色のカラーコンビネーションがある。どのくらい大変な作業か想像できるだろう。
 制作のプロセスを説明する前に、機械的なセットアップの方法を教えよう。エシュバウは普通の事務机ほどの大きさのテーブルのうえに、2つの光源とレンズを下にするようにカメラをセットします。カメラの駆動機構と電気モーターを繋ぐロッドは常に連動している。操作者が右手でボタンを押すとロッドがカメラ駆動機構と連動して、カメラの1フレームにつき1枚写真を撮る。
 しかし、カメラの撮影範囲はどのくらいだだろうか?まず厚さ3/8inch(約0.95cm)、12inch(約30cm)四方のガラスシートをスポンジゴムの上に設置する。1枚$30する光学ガラスは、極力反射をさせないようにほぼ無色透明となっている。ガラスは2つの金属に挟まれて、テーブルの下にあるペダルで上げ下げができる。しかし、まだ撮影の準備は出来ていない。まずカートゥーンを作らなければならない。
 であるから、えんぴつスケッチを描いているアニメーターやセルロイドシートに色をつけているアニメーターがたくさんいる部屋に戻る。後者は文字通り背景を描き、プロセス全体のきもである。エシュバウはスクリーンに映る前に色が変わらない完璧なカラーコンビネーションを作るために様々な研究をしてきた。どのようにして成功させたかはもちろん秘密事項だが、プロデューサーたちはこの秘密のためならどんな高額でも支払うだろう。
 まずは、シリーズの主要なキャラクターのグーフィーゴートとナニーゴートが田舎道に居るとしよう。田園風景の背景は恐らく縦横4ft(約120cm)のシートに描かれ、彩色されている。グーフィーとナニーがその道を歩くとしたら、その動きを見せるために1フレームあたり1/16inch(約0.15cm)から1/4inch(約0.64cm)ズラす。
 続いて、セルロイドシートにカラーで動物が描かれる。
 
 
<P30-31 見開き>
左ページサブタイトル:
赤と青の色素がカラーカートゥーンに豊かな色彩を与える
 
右ページサブタイトル:
カートゥーンは5枚重ねで撮影されることもある

 

左ページ右上の解説:
 このアーティストたちは1個のリールの為に、各自15,000枚のイラストを描いている。
 
左ページ中央左の解説:
 最初のカラーアニメーションカートゥーンの主要キャラクター、グーフィーゴートとナニーゴート。
 
左ページ中央右の解説:
 カートゥーン映画のサウンドエフェクトを作るためには写真のすべての楽器が必要だ。コメディー作品は後ろに写っているスクリーンに投影された状態で、それに合わせてサウンドエフェクトを作っていく。
 
右ページ中央右の解説:
 テッド・エシュバウが自分の作業場にいる様子。自分で発見した方法でカラーアニメーションカートゥーンのフィルムをチェックしている。
 
右ページ中央左の解説:
 作業時間短縮の為に小さなアクションならば、同時にセルが描かれることもある。この写真では演奏者は動かないが、ピアノの中に入っているヤギと演奏している手が動く。
 
右ページ右下の解説:
 これは左上にある2枚のイラストを重ねた様子。次のシーンでピアノの絵が変わるが、演奏者の絵は変わらない。
 
 
<P30-32>
本文:
 動物のグループ全体が1枚のシートに描かれる時もあれば、手だけが1枚のシートに描かれ、それ以外の体全体が2枚目のシートに描かれる時もある。
 
その理由として:
 渋滞の中、グーフィーが青い小さな車に乗っていて、紙に描かれた色が異なる青空の背景のシーンがあったとしよう。紙の背景がカメラテーブルのあるスポンジゴムの上に置かれ、準備完了。その上に赤に白と黒の排気ガスが塗られたセルロイドをのせる。2枚目の”セル”には青い車、3枚目には黒いウェストに赤いズボン。4枚目のセルは青いシャツに茶色のズボンを履いた交通整理の警察官。一番上、5枚目のセルには警官の腕、手には最初赤でそのあと緑に変わるハンカチ(交通安全の旗?)を握っている。そしてすべてのセルが動かないように上からガラスプレートが置かれる。
 この若い監督はアニメーションカートゥーン初撮影でカラーを作るだけでなく、5枚の厚さのセルロイドも作ったのだ!
 これはもちろん、エシュバウが意図したもので、鮮やかな赤から緑へ瞬間的に色を変えることが出来る。主に色を用いたギャグを実現するものだ。
 交通整理の警官が車を止め、まず赤いハンカチで鼻をかんだ。鼻をかんでいる間に笛が鳴ったから、ハンカチを緑に変えた。でも鼻をかんでいるから、車は止まり渋滞が起きた。警官の腕はアニメーションになっていて、そのセルロイドだけこの短い話の中で変えられた。音は映像が完成してからシンクロする。
 「色の作り方だよ」とエシュバウは説明した。
 「私は下から上へと作業を進めるんだ。上に置かれる4枚のセルロイドを透過させるために排気ガスに赤を使った。私たちは1つの画像のために5枚のセルロイド使うこともある。普段は3枚使うが、複雑な行動の時にはもっと必要になります。見ているお客さんにはあまり変化が分らないだろうけど、もっと濃い色を出すことが出来る。
 「数週間をかけて作るフィルムに、常に一定の色を用いるためには輸入した色素とペンキを混ぜて使います。その他に重要なカラーチャートがあって、大体赤、青、緑、茶色とグレーを使う。あと、最初の段階で気付いたんだけど、基本の色はスクリーンに投影した時、全く違う効果を持つんだ。薄く映る色もあれば、濃く映る色もある。私は今、黄色、緑、茶色で作ることのできる、まだ名前の無い特別な色を使っています。この色は何かの定式で出来ているわけではなく、複雑な研究とデータの記録により出来上がりました。
 「照明や色の組合せで5枚重ねのセルロイドから色を記録することができます。まずセルの両面、白と黒は表面に他の色は裏面に塗ります。伸ばしたアコーディオンを持つ動物の手のためには多分、数十単位の異なるイラストが必要になる。そして、その1つ1つが完璧に適切な、絶妙の色合いでなければいけない。
 6色が1枚のイラストに使われることがあるが、元々エシュバウは赤と青の2色から始めた。彼いわく「すべての色が単純に見えるだろうが、実は大変な研究が必要なんだ。セルロイドには色を破壊するハレーションが含まれている。その問題を解決するために平坦で特徴のない太いセルロイドを作ったという。
 キャラクターの動きは、それぞれ異なるイラストで表現しなければならない。例えばグーフィーが右足から順に左足で歩くためには5枚のイラストが必要になる。左右のステップで9枚のイラストだ。そしてグーフィーがスクリーンを歩いて渡るためには50枚のイラストが必要になる。
 キャラクターが歩く場面の場合イラストの距離は1/4inch(約0.6cm)離れていないといけない。走る場面の場合は3/8inch(約0.9cm)離れていなければならない。結果は撮影し、スクリーンに投影してみなければ、それが適切な速度かどうかわからない。アニメーターが鉛筆でオリジナルとなるイラストを描き、それをトレーサーがインクを使い透明のセルロイドにトレースする。この仕事が終わるとセルロイドはカラールームに移され、美術担当が描かれたアウトラインに沿ってイラストの裏から色を塗る。各自のシーンに相応しい色の背景が紙に塗られて、セルロイドが来るのを待っている。
 完成した作品を確認したエシュバウは、カメラルームの角の机の上に完成したシーンのセルロイド15,000枚を置く。その中から数点、繰り返し使える物を選び撮影を行います。これがリール上のフレーム数よりセルロイドが1000枚少ない理由です。
 エシュバウは頭上で小さなモーターが回る、カメラテーブルの自分の席に座る。2つの白熱灯が灯るテーブルの中心にスポンジゴムを置き、背景を固定して、その上に3枚のセルロイドを置いたら、カメラの光学レンズを下に向けてキーを押す。そうやって最初の32,000の画像が撮影された。カメラ1回の撮影で別々のネガに写り、同じ2枚の写真が撮られる。次にエシュバウは上のセルを外して、そこに違うセルを置いて撮影する。それが2週間続く。
 カメラは既に説明したように『クランクを一度動かすと一度撮影する』準備が出来ている。適切な焦点距離のレンズの下にはイラストボードに似た2つの釘がテーブルの上に置かれている。背景とセルロイドは、この釘の上に置かれます。
 エシュバウがセルを素早く変えて、カメラを傾けながら、カラーコミックの”カメラアングル”について説明を始めた。
 「カメラは同時に2つのフィルムに撮影していく。1つのフィルムは赤、もう1つは青を選んである。昔は2台のカメラを使って、それぞれで2つのネガを作らなくちゃいけなかったんだ。その時はネガの横にある穴が切られたりして、合わない時があったからちゃんと整合するのは難しかった。だけど、今はカメラの撮影のときに同時にフィルムが出来ているから、ちゃんと同じように切られている」
 「以前はフィルムに記録されていた音が、今では画像のネガ上に印刷されている。新しいフィルムは同じ写真2枚をその両側に受け取れるように、二重のコーティングがなされている。そこにプリントが終ったら、フィルムは赤と青、もしくは赤と緑の染料で色を受け取る。スプレーで噴射されるか、長いタンクの中を進む。繊細な色の乳剤の化学反応によって、1色がフィルムに描かれたオリジナルイラストの片面に着き、一致する。同じ手順をフィルムが乾燥したあとに繰り返し、2色目を先程の逆の面が受け取る。その後フィルムは防腐剤に通されて、投影準備完了だ。
 これでカラーコミックの完成だ!

原文下訳:比嘉セリーナ

翻訳補佐:新藤裕登

翻訳監督:丸田剛司

bottom of page