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名作お伽噺がカラーの長編マンガ映画に

A Famous Fairy Tale is Brought to the Screen as
the Pioneer Feature-Length Cartoon in Color

著/アンドリュー・R・ブーン

 

 

<P18-19>

左ページ中の解説:

有名なお伽噺が先駆的長編カラーアニメ映画

としてスクリーンに登場。

 

本文:

 空調が整えられたハリウッドスタジオ実験

室の黒い壁の後ろで、奇妙な8段構えの

奇妙な台座に備え付けられたカメラが

シャッターをきり、362,919にも及ぶフレ

ーム数のカラー映画フィルムの最終

部分を撮影している。150万枚を超え

ペンとインクの作画と水彩画が用い

られている世界初となる長編アニメ

映画の誕生だ。これまで実写でしか

見たことのない画面の深度、異なる

アングルからの映像がカートゥーン

で再現されている。

 この巨大カメラと大作映画の始まり

は、ミッキーマウスとドナルドダックを生み

出したウォルト・ディズニーが4年前に下した、

有名なお伽噺をベースに長編映画を製作するという決断に端を

発している。その結果、グリムの有名なお伽噺をマルチプレインカメラで撮影した

映画版『白雪姫』が完成したのだ。

 従来、カートゥーン映画とは平面台(原文:single plane)に固定された連続する線画やペイント画が描かれた四角いセルロイドシートを撮影して作られるものだった。つまり、“セル”もしくは絵の上に重ねられる透明なシートを撮影する時、1枚の紙のように重ねられる。ひとつひとつのセルにはスクリーンに映し出されるシーンの一部が描かれている。

 ディズニーは、映像を構成している沢山の絵の多彩さを向上させたかった。そのため、背景画にソフトフォーカスをかけ、複数の層を個別に照らし、背景画を前景と離すなどして背景に描かれているものの遠近感を表現させた。

 彼の制作スタッフはこの成果をあげるための新しい撮影デバイスを完成させるために3年の時間を費やした。装置は垂直な4本の鉄製支柱から構成されており、縦横双方に動かすことの出来る8つのラックが備え付けられている。各段には背景やアクションが描かれたセル画のフレームが乗せられている。

 印刷するためのプレス機のようなこのカメラスタンドは、高さ11フィート、広さ6平方フィートもある。マイクロメーター単位での精密さで組み立てられており、たとえ最上段がレンズから2フィート、最下段が9フィート離れていても、前景と後景のセルを正確に撮影することができる。台本の指示でクローズアップのためにカメラにトラックアップさせる必要があっても、各ラックが上昇する間、カメラのレンズは静止状態を保てる構造になっている。つまり、家屋、木々、空の月、その他すべての背景物が適切な距離感を保つことができるのだ。

 アクションへのすべての準備が整ったら、オペレーターは各段にあるカメラの持ち場へつき、セル画の位置を調整し、高さを整え、担当するシーンにトップライトやバックライトを施す。そしてカメラに対しているキャラクターのセル画以外のセル画を動かすことで、距離のイリュージョンは創られる。

 単一の露出で原色を3枚のネガで焼く実写のカラー撮影とは異なり、カラーアニメを作る際はカメラは赤、緑、青を別々に捉えているセルのセットを3つの露出で撮る。従って、7,560ftの映画を撮るにはその3倍の長さが必要だった。その後、すべての色が1つのネガに焼き付けられる。

 実際に撮影が始まるその前に、アーティストは何十、何千もの作画をこなしている。アニメーターは6ヶ月間も作業して、そのキャラクターに合ったイラストや雰囲気、魂を落とし込むため、数えきれない数の絵を描く。そしてそのイラストを同じ用に描けるまで毎日書き続ける。500人の声がテストされ、ここから9名ほど、キャラの性質に合う声がアニメーターによって選定される。音響係は、砕け割れるガラスの音、床に落とす箱の音、ドロの上で歩く音など、様々な道具を使って音の研究をし、そのアクションに合うかどうかを確認する。キャラクターやムードを表す色も選ばれた。

 カートゥーンでは、全ての音声はカメラが回される前に収録される。これらの音は後に動きに合わせられ、ベースとなる時間単位にチャート付けされていきます。プロジェクターからは毎秒24枚の「フレーム(連続する個別の絵)」が映し出されるため、その動きや音声もそれに応じてタイミング付けられていないといけない。音楽の各拍子は電子メトロノームによって合わせられる。その他の要素はこの拍子に合わせられている。

 アクションと音は1秒の何分の1単位で一致させなければならないため、作業チャートは作品のすべてのパート分が用意されている。各々の絵にはアーティストの作業に指示を出す注意書きが記されており、そして彼らの絵は後にそれで同意するように間隔があけられる。チャートに従い、アーティストも作画家も音響係も、フレームごとに各自担当の作業にあたる。

 最近、全員がイヤフォンを装着した俳優やミュージシャンたちのセリフや音楽を収録している現場を見た。俳優たちは会話の韻律を追い、監督はバトンを振って予定していたテンポを追う。各音節、各音符はすべて音楽のビートに始まり、ビートに終わる。

 口から発せられた言葉による声のグラフは、それを研究し、アクションを作り、描かれた口で機械的に再生された声を聞き込んでいるアーティストたちへと送られる。

 アニメーターがさまざまな口の動きを描くとき、具体的に何フレームで描かなければならないかを確認するため、彼らはしばしばサウンドトラックを頼る。ドワーフが食器やグラスに転げ落ちるときや床に叩きつけるときなどは、アニメーターは映像にあてることになるサウンドフィルムを聴く。

 音は、動画担当者へ恒常的に問題をもたらす。彼らは、実写映像と同様に、将来的な利用のためにフィルム上の音声を保存しておくことができない。ここでもまた、彼らはフレームごとに動きと音をマッチさせないといけない。

 あるシーンでは、ひとりのドワーフが階段を上り、足を滑らせ残りの6人のドワーフも巻き込んで食器へ転がり込んでしまうものがある。舞い落ちる割れ物の音はスピーカーの大音量ではまったく違う音のように聞こえてしまう。そこで音響スタッフは防音スタジオ内に山々と箱を積み上げ、そばにマイクを吊り下げ、その山を崩して一連の音を収録した。後にアーティストたちがその音を聞き、落下ごとに音をあて、音に合わせられた絵が描かれた。グラスの割れる音は男がふたりで8フィートもの梯子から大きな窓ガラスを落としたものが合わせられた。

 台本に記してある他のこんなアクションが音響係の仕事を難しもした。話す鏡はどのような音がでるだろう?7人の小人はスープを飲む時、どんな音を出すのか?それ以上に、サウンドトラックとしてどうやってこの音を出せば良いのだろう?こうした問題は、天才のマジシャンが解決してくれた。

 もし鏡が話すとすれば、銀色の表面から男らしい声で話すだろうと決められた。何週間も、ボックスの中からやシートの中から、共鳴板越しなどで声が録音された。最終的に音声技術者は古いドラムの膜を5箇所にしっかりと張り6箇所は開いたまま残した四角い箱を使うアイディアに行きついた。そこに役者が頭を入れて、台本のセリフを近くのマイクに喋り込み、話す鏡が完成した。

 スープに関しては、7人のスタジオ従業員がテーブルに1日半座って、ずっと麦芽乳とウエハースを食べ続けた。短く素早く音を立てて飲む音はテノール楽器の代わり、長い音はバスの代わり、といった具合だ。

 小人たちが顔を洗いながら歌を歌う所は、不思議な音を録音することに長けた7人の精鋭を浴槽5個分の大きさがあるタンクの周りに配置して、交互に顔を洗ったり水に顔をつけたりしながら歌わせた。録音には密閉したマイクを水中に沈めて行った。キャラクターが沼で泳ぐシーンでは、タンクに泥を入れて、イヤホンでメトロノームのテンポを聴きながら男性が何時間も間その中を歩いて録音した。

 そうしている間に、カートゥーン制作のキモである色の塗り付けも、サウンドエフェクト並に機械的になっていった。長編作品の撮影では、白雪姫はスタジオ内のペイントショップで手に入る350の基本色から選ばれた15の色彩配合が用いられて登場した。これらは685 1/2(黄色い靴)からパステル23(頬)のいずれとも異なる。彼女が歌うとき、彼女のクローズアップ時に6種類の色が彼女の眼や口に足される。瞼にはクチナシ色が、唇には浅紅色が使われる。それぞれの絵に特定の色が複数の箇所に彩色されるにあたり、スタッフは数ある彩色の色を番号で識別している。

 単一の撮影に使われる3~7枚のセルを描く際、その枚数は動きとキャラクターによって決定される。最もシンプルなもので4枚のセル画が使用される。

 白雪姫が歌を歌っているシーンを撮影するとしよう。そのシークエンスでは白雪姫を動かすセルと、家の壁などの舞台セッティングのセル画が要る。その上には彼女の頭と腕を省いた胴体のセルが置かれる。

 撮影の数週間前に合わせられる音が収録された必要な動きを表す際は、彼女の頭部を描いたセルと腕を描いたセルが胴体の上に重ねられる。各露出が終わった後に、新しいセル画がこの場所を撮るために加えられる。一般的には秒間24枚の作画が映し出され、たくさんの絵のブレンドが色つき動画に必要な魔法となるのだ。

 

 作品の全体および一部分を表す多数の絵の作成かなるアニメーション作成の段階をひとたび過ぎれば、カートゥーン制作は大に機械的になるが、優れた機械の製造で見出されるような精度も必要とされるようになる。

 “インクとペンキ”は製造のボトルネックだ。カートゥーン映画において、熟練者が多数の絵を仕上げられることほど早く進むものはない。完成された作品のそれぞれのフットには平均22枚の個別のセルが必要で、166,352枚の完成された絵がカメラで撮影される。

 1日では90フィートのフィルムを撮影し、これは24時間で1,960枚の絵を必要とする。これは世界一大きく最も厳しい絵描きの仕事である。

 

 

<P18-19>

左ページ右下の解説:

 (上)セルロイドに描かれているフィギュアをペイントされた背景に撮影する特別なカメラ。(右)助手がポーズを取って、アニメーターがカートゥーンのキャラクターを描く。

 

右ページ右上の解説:

 女子アーティストが白雪姫のオリジナルをセルロイドにトレースしている。

 

右ページ左下の解説:

 背景描くアーティストがシーンでのキャラクタームードを表す為セッティングの作業をする。

 

右ページ右下の解説:

モンスターカメラが作動する。写真は装置がどのように各台に置かれるセルシートを撮影するかを表している。

 

左ページ左上の解説:

“セル”もしくはイラストが描いてある透明のシートの束を持っている。すべて、歌を歌う白雪姫の異なった動きを見せる。この連続を早く見せることで動きをあらわす。

 

左ページ左中の解説:

話す鏡の音を撮るために、役者は古いドラムの膜に包まれているフレームに顔を入れた話す。

 

左ページ左下の解説:

7人の小人が顔を洗う音は男性陣が水が入ったタンクに頭を突っ込んで作った。顔を水の中に入れたまま歌を歌った。

 

左ページ右下の解説:

小人が下に落ちる音は、マイクの前に置かれたボックスを倒して撮った。

 

 

原文下訳:比嘉セリーナ

翻訳補佐・監督:丸田剛司

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