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実写俳優とディズニーキャラクターの共演

How Disney Combines Living Actors with His Cartoon Characters
<P22-23 見開き>
左ページ左下の解説:
 ウォルト・ディズニーの新作映画『三人の騎士』
からの、ドナルドダックがダンサーからフルーツ
を盗むシーン。実写俳優がカートゥーンキャラ
クターの前で動く。この素晴らしいシーンは右
の背面投影の技術で撮影されている。
 
右ページ中央の解説:
 新しいキャラクターのパンチート(真中)は
形と色の両方で調整しないと駄目だった。
ドナルドの青、白、黄色とホセの緑、クリ
ーム色、黄色、朱色、これらと被ってはい
けなかった。
 
 
<P24-25 見開き>
左ページ下解説:
 これがディズニーが開発した二次元
のアニメ映画に奥行きを再現するための
多葉機クレーン(写真左)。装置上部に下を向けて設置され
ているカメラがさまざまなシーンを異なる距離感で撮影する。そうすることで映
像に3次元的な深度の幻を再現できる。下の写真はスタッフが背景画をスライドさせて撮影の
準備をしているところ。
 
右ページ中解説:
 カートゥーンキャラクターが実写の俳優の前に来るとき、その逆の作業に比べれば簡単なものとなる。実写映像が前方にある鏡へ投射され、小さいスクリーンへと反射される。半透明なセルシートに描かれるキャラクターがスクリーン越しに上方に備えつけられているカメラによって撮影される。下の写真ではドナルドダックとホセ・キャリオカのセル画が洗浄されている。机の下に鏡が見てとれる。
 
右ページ左下解説:
 上の写真にあるカメラのディゾルブシャッターには1/10度の正確さで調整が可能なカウンターがついている。下はオペレーターがフィラメントの側部調整のために白熱電球を調整している。前面についている鏡は対象へ光を収束させるためのもの。
 
 
<P26-27>
左ページ上解説:
 メキシコの新しいキャラクターであるコッキー・ルースターは、ディズニースタジオ一の脚本家エルニー・テラザスのイマジネーションによって生みだされた。左の写真は彼と彼の最初期のスケッチ。パンチートがキャラとして了承されたとき、100人ものスタジオ従業員が必要となる150,000枚以上の作画を仕上げていた。
 
左ページ下解説:
 ディズニーキャラクターたちが登場するシーンの背景は完璧でなければならない。これらを描くとき、アートリレーは旅行フォルダとその他の確たる要素から取り掛かる。背景には高額な値段がつけられることもある。
 
<P22-27>
本文:
 ウォルト・ディズニーの名誉の殿堂に新たな仲間が加わった。ディズニー十八番のトリックで新たな驚きがもたらされる。具体的にはドナルドダックやホセ(ジョー)・キャリオカと性格の似たメキシコの雄鶏パンチートが、三次元の俳優と同じスクリーンでデビューを飾ったのだ。
 新しい映画のタイトルは『三人の騎士』、メキシコと南メキシコを舞台とする長編のファンタジー映画だ。誰もが(アメリカの)良き隣人の映画として認識するため失敗することはないだろうが、ホセ(ジョー)・キャリオカが『ラテン・アメリカの旅』でブラジルを代表とする南米のポルトガル語圏のキャラクターとして描かれたことを考えると、パンチートはスペイン語圏のキャラクターになる可能性が非常に高い。
 そのあとはディズニーの魔法のような宣伝手腕によって、「どうやって撮ったの?」という必然的な声が何千もの人から聞かれることだろう。実は簡単ではない。映画には緻密な計画が必要だった。最初はキャラクターのコンセプト作り。そのあとはスタジオでのビジュアル、彼の生まれ育った環境の背景、そして最も重要な彼の色の選定だ。パンチートはドナルドダックの青、白、黄色やホセ(ジョー)・キャリオカの緑、クリーム、黄色に朱色とは被ってはいけないが、個性的で、どんな背景にも似合う必要がある。スタジオはパンチートに黄色いクチバシと足、赤い鶏冠にグレーの帽子と紫の服を与えた。そしてパンチートの声を担当する声優探しも大変だった。100人の声優候補の中からサンフランシスコのコパカバーナのナイトクラブで活躍するエンタティナー、ホアキン・ガライが選ばれた。
 こうした準備が終わり、各分野に配置され、多くの打合せを重ね、承認されてから背景デザインスタッフにGOサインがでる。彼らは、映像に適切な距離感を与えることができる多葉機クレーンで使う水彩画と油彩画をガラス版状に用意しなければならない。同時に、アニメーターの仕事は忙しくなる。彼らの作業机には鏡があり、彼らのキャラに表現させたい感情を自分で作ってみてそれを描いている。
 このような映像を製作する際には他にも悩みの種がある。『パンチート』のアニメーターであるワード・キンボールは、俳優がしそうなシーンの解釈ではなく、彼は細部を分析したチャートを読み込んだ後に演技を指導した。これらにはフィルム内のフレームで撮られたセリフ、各単語の長さ、その間隔、母音と子音の音、アクセント、呼吸の吸い込みに吐き出しに至るまで含まれる。仮にパンチートが「やあ」と言ったとしよう。編集部が収録された単語には8フレームが必要だと指示すれば、キンボールはキャラの口の動きに合わせたシークエンスの8枚の絵を仕上げなくてはならない。アシスタントがラフ画をトレースし、大まかなに描かれた線をペン入れしていく。透明なセルへのトレースが終われば、次は様々な濃淡と色の線でペン入れされていく。
 「セル」と呼ばれるセルロイドのシートに線画を描き終えたら、今度はペインターの出番となる。彼らは慎重に適切な色を選び塗っていく。ディズニーには1000もの色彩記号があり、『三銃士』ではそのうちの200あまりが使用されている。作品を作るにはおよそ150ガロンの絵の具が必要になり、1パイントの金額は$5となる(1ガロン=8パイント)。
 パンチートのおふざけを撮影するには3つの撮影用機材が用いられた。彼は、防音、空調が効いた室内にある多葉機クレーンの最上段に置かれている。各段は段越しに反対が見えるようになっており、動かすこともできる。最上段のパンチートのセルは金具でガラス版に固定されている。適度に距離があけられたその下段には油彩された4種類の背景がならべてある。彼の魔法のセラーペがバヒアやブラジルなど西の空の旅へ滑らかに進むなか、遠方にある雲が東へ流れていく。ちょうど多葉機クレーンの真上から見下ろす位置にあるテクニカラーカメラがシーンをコマ撮りする。こうすることで滑らかな飛行の様子を撮影することができる。
 多葉機クレーンとカメラはアニメのアクションしか作成できないし撮影できない。しかしスクリーンではパンチート、ドナルド、ジョーが、歌手やダンサーといった実写の役者がいるなかを縦横無尽に駆け回っている。こうした実写にアニメを重ねあわせる技術効果は、先に撮影された映像背景の前に俳優を立たせて演技させるという、メジャーなスタジオならばほぼすべてで活用されていた映写技術の発展がもとに成されている。ディズニーの保有していた小さな映写機はカートゥーンキャラの動きは撮影できるが現実の俳優はこの雑誌の2倍ほどしかないサイズのスクリーンでは演技ができない。幾人かのスタッフはこの大型投影の作業で忙しくなった。音楽と歌が録音され、アニメーションもそれに合わせて調整された。映写機から最大限光を送れるように、光学の専門家が特別なクォーツ・レンズをデザイン、開発した。音響スタッフが縦14フィート、横20フィートの半透明のプラスチックスクリーンをセットし、プロジェクターを50フィート離れたところへ、カメラを反対の25フィート離れた場所に設置する。ステージ上、映写されているアニメの前で役者が演技をする度に、テクニカラーカメラが双方を撮影する度に調整が加えられる。
 次にディズニーは、クローズアップされたドナルドダックが前景を歩くオーロラ・ミランダの持つトレイから果物を盗む最初のシークエンスのコンビネーションを撮影する。オーロラの歌声、パンチートのコメント、ドナルドの話し声らすべてが映像の一部だが、これらのシーンは無声状態で撮影され、口の動きは先に録音された音声に合わせられている。ディズニー作品のなかで最も傑出したクオリティを誇る、しかしパッと見ではそれほどでもなさそうな『三銃士』はこうして公開された。映像がどのように制作されたかの秘密を貫くことは物語そのものへの関心を超えるだろうか?そして、ディズニーの天才性はどこまでアニメーションと生身の人間を交わらせていくだろうか?
 
  1. 表現方法の獲得は自己分析を必要とする。アニメーターのワード・キンバルは鏡を見ながら自身が描きたいキャラの表情を実際に自分で作ってみている。アートの才能の次に必要とされるのはこうした演技力なのだ。もしパンチートが「やあ」といえば、キンバルはパンチートがその発音に動かす口の動きを表す8枚のイラストを仕上げなければならない。
  2. アウトラインを消す作業はアニメーション制作初期の段階における必須作業だ。イラストは下から照らされているトレース台にしかれ、経験のあるスタッフが大まかにひかれた線を消しながら一本の本線に仕上げていく。この後、イラストは女性スタッフによってセルシートへトレースされていく。
  3. 線をペン入れしていく作業が次のステップだ。いろいろな太さと色の線を使い分けていく。この作業はキャラクターの輪郭をはっきりとさせ、アニメーターそれぞれの個性ある表現を保存していく。線の位置は縦横ともに厳密に合わせられなくてはならない。ひとつのシーンで数千枚ものセル画が必要となる場合もあり、そのどれもが厳密に仕上げられている。
  4. 彩色を施していく作業は骨の折れる仕事だ。優秀な女性スタッフたちが慎重に色見本と見比べながら、全作画を通してキャラクターの色の変化がないように気をつけている。およそ150ガロン、200種類ものペンキが一本の作品制作に用いられる。ペンキにかかる費用は1パイントあたり$5かかる。

原文下訳:比嘉セリーナ

翻訳補佐:新藤裕登

翻訳監督:丸田剛司

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